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【シリーズ】SVS調査

[公開日2018年6月7日]

第1回 SVS調査のきっかけ

こんにちは!外来看護師長の幌 沙小里(ほろさおり)と申します。
今回は、私達が外来で実施している「SVS調査」というものをご紹介します。
外来では、2013年の夏から、外来通院患者さんのSVS(ソーシャルバイタルサイン)調査を実施しています。皆さんには『連絡先調査にご協力お願いします』というポスターを貼ってお知らせしています。
SVS(ソーシャルバイタルサイン)という言葉は、当法人の理事長 堀毛清史(ほりけきよし)医師にり提唱された言葉です。私たちが医療現場で測定する皆さんの熱や血圧、脈拍などの「生きている証」であるバイタルサインに対して、どんな家に誰と住み、何を食べ、どのような人間関係があり、保険や社会保障等の基盤はどうなっているのか、など、「人間らしく生きている証」のことをソーシャルバイタルサインと表現したものです。

 

私達はこの調査で、自宅以外の連絡先、介護保険の申請や利用の状況、介護認定されている場合にはケアマネージャーさんの事業所や氏名、健康友の会への入会の有無、家族構成(どなたと暮らしているのか)、お子さんがいる場合にはその方の連絡先、住宅の状況や差支えのない範囲で経済的な状況などもお聞きします。更に、普段の買い物やお出かけの時に手伝ってくれる方はいるのか、町内会や友達とのお付き合いがあるかどうか、サークルや習い事など外に出る活動はされているかという、その方の周囲の方たちとのつながりなどもお聞きすることがあります。…が、「はじめまして!」で込み入ったことを唐突にお聞きすることはありませんのでご安心ください。

 

私達がこの調査を開始したのは、ある悲しい出来事がきっかけでした。
勤医協苫小牧病院には、地域の高齢の方がたくさん通院しています。介護保険を利用している方や、元気で介護保険の申請をしていない方など様々な方がいらっしゃいます。

その中のひとり、お元気でひとり暮らしをされていた通院患者のAさんが、自宅で亡くなられていたことがわかりました。予約外来の約束の時間になっても来院がない、お電話をしても繋がらないということが発見のきっかけになりました。この時私たちは、Aさんに電話してもつながらないため、その他の連絡先を調べようとしましたが、外来では自宅以外の連絡先が分かりませんでした。
たまたま入院したことがある方だったので、入院時に伺っていたご家族の連絡先がカルテにあり、繋がることが出来たのでした。


それより以前にも、当院の通院患者さんが救急搬送された直後に意識が無くなってしまい、ご家族の連絡先が分からない!という出来事がありました。遠のく意識の中、お子さんの名前や職場の名前を何とか聞き出し、あちこちに電話をして最後は警察にお願いしてお子さんと連絡を取ったということもありました。

 

Aさんの悲しい出来事を私たち外来看護師は、みんなで共有しました。
すると、亡くなる半年ほど前から、少し物忘れが気になり始め、定期通院の日を忘れて何度か電話をかけて来院して頂いていたことがわかりました。その時すぐにお子さんと連絡をとったり、介護保険の申請を勧めたりできていたら、もしかしたらAさんは一人で亡くならなくても済んだかもしれない、亡くなってから何日も発見されないということがなかったかもしれない、私たちは、そんな思いに駆られました。そして、お元気な方ほど、自宅以外の連絡先や家族の状況を何も知らないということに気づきました。介護保険を利用している方は、ケアマネージャーさんがいますから、定期的に訪問があり、サービス調整なども行われます。しかし、そうでない方達にもし何かしらの変化が生じた時には、気づくのは外来で定期的にお会いしている私達かもしれない。


私達の病院が、何かあったときの連絡や、必要な方や機関との橋渡し役になろう!そして、お元気に、今の生活を少しでも長く続けられるよう何か支援をしたい!これが、SVS調査を始めたきっかけです。

そして5年前の2013年の夏から、SVS調査が開始されました。

(第2回へつづく)